ダイアグラムというのは列車やバスの運行表に代表される図表のことです。何台かの列車が2つの駅の間を往復している状況が、横軸に時間、縦軸に距離をとったグラフの中で表現されます。実際のダイアグラムを見てみましょう。この例では3台の列車が2つの駅の間を定期的に往復している様子が描かれています。
この図には3本の線がまるで網目のように交差しながら描かれているのが分かるでしょうか。ダイアグラムの中に描かれている線の1本1本がそれぞれの列車に対応しています。列車がA駅からB駅に向かうときは右上がりの直線になり、B駅からA駅に向かうときは右下がりの直線になります。また平行な部分は列車が駅で停車している時間です。1本の線を注意深くたどると、その列車の動きが分かります。
全ての列車は全く同じ動きを周期的に繰り返します。列車は発車時間をずらして均等に配分されているので、駅にいる客から見れば列車は到着、発車を等間隔で繰り返しているように見えます。もちろん2つの電車が1つの駅に同時にやってくる事はありません。(京都の市バスも見習っていただきたいものです…。)
これは簡単な例でしたが実際には列車の運行はもっと複雑です。急行と普通列車があれば、走る速度が変わってきます。中には途中の駅で折り返して戻ってくる列車もあるかもしれません。どのような状況でもできる限り効率よく列車を走らせることは時刻表を作る人にとっては重要な課題です。1つの駅に複数の列車が集まってしまう事を防がなければなりません。また駅にいる客からすれば列車が等間隔で発着してくれる方が都合がいいことも忘れてはいけません。状況が複雑になればなるほどこのようなダイアグラムを書く重要性はきわめて大きくなります。
さて、そろそろジャグリングの話に戻りましょう。勘のよい方はもう気づいているかもしれませんが、上に書いた事はそのままジャグリングに当てはめる事ができるのです。もちろん上の例で列車に相当するのがボールであり、駅に相当するのがジャグリングをする2つの手です。ジャグリングというのは2つの手の間でいくつかのボールを受け渡す事です。しかしそれにはいくつかのルールがあります。少なくとも1つの手に2つ以上のボールが同時に落ちてくる事は避けなければなりません。(2個のボールを同時にキャッチするのは至難の業です。できないとはいいませんが…。) またできれば右左が均一なリズムでボールを投げられる事が望ましいでしょう。どんなにジャグリングにはルールはないと言っても、適当にボールを投げてジャグリングができるわけでは決してありません。ジャグリングも列車と同様、かっちりと定められた規則の中で運行されているものなのです。
これはつまり多くの(ジャグリング可能な)パターンは先程の運行表のような規則正しいダイアグラムで表現する事が可能だということを意味しています。これがジャグリングのダイアグラムノーテーションです。
下のダイアグラムを見てください。これが実は3ボールカスケードをダイアグラムノーテーションで表したものです。表現の少しの違いを除けば、先程の電車の運行表と全く同じものである事が分かりますか?
簡単に説明するとそれぞれの線がここではボールの動きを表しているのです。斜めの線はボールが一方の手から一方の手に投げられている様子を、平行な線はボールが手の中にとどまっている様子を表しています。先程の電車の例がなぜボールに置き換えられるのかがよく分かるでしょう。このノーテーションの詳しい意味は後でゆっくり見ていくとして、とりあえずこのダイアグラムの持つ美しい対称性をよく味わってみて下さい。
ジャグリングのダイアグラムはある種パズル的な美しさがあります。複雑に動く複数の線がダイアグラムの中で見事なまでにかっちりと組み合っている様子は感動すら覚えます。そんなところにも注目しながらダイアグラムノーテーションの世界を観察して見ることにしましょう。